2024年9月9日月曜日

校長雑記#160【まずは、あるがままを受け入れることから】

 以前このブログで、特別支援教育に造詣の深い川上康則先生の本を紹介しましたが、

今回、また素晴らしい本を出版されました。

『マンガでわかる はじめて特別支援学級の担任になったら 教師と子どもが成長する学級経営』(川上康則 著 Gakken)


「あなたは特別支援教育を見下してきた?」から始まる内容は、辛口な言葉を混ぜながらも、一つ一つ本質をついていて、納得させられるとともに、そのすべてが通常学級にも通じるものだと感じました。


その中にあるコラムの一部を引用します。

 多くの学校では「求める子ども像」が設定されています。

「明るい」「元気」「素直」「考えて自分から行動する」「相手の気持ちを考える」「思いやりがある」「協調性がある」など、どれもポジティブです。

 ところがすべての子どもが、「24時間ずっと爽やかな雲ひとつない快晴のような状態」をキープできるわけではありません。

 誰だって、不安やあせりなどの心理的危機に直面します。悲しさや切なさの経験も重要ですし、息苦しさやもどかしさも大切にしたい気持ちの一つです。

 (中略)

 あらためて、これまでの学校文化を振り返ってみると、ポジティブさを強調するあまり、人がごく自然に持ち合わせているネガティブな側面を認めない、あるいは許さないという方向性も同時に強くなっていったのではないかと感じます。

 ポジティブな子ども像は、大人が抱きがちな幻想にすぎません。そうあってほしいという気持ちがエスカレートすると、その先には「こうあるべき」の押し付けが待っています。

 (中略)

 特別支援教育に携わっていると、大人が一方的に設定するポジティブな子ども像にあてはまらない子どもがいることに気づくことができます。彼らの存在を「枠におさまらない」「手に負えない」と問題視するのではなく、私たち大人の傲慢さを見つめ直すきっかけにしていきたいものです。


教育現場は今、当たり前だと思って行ってきたこと一つ一つを見直さなければならない時期ですが、特別支援教育や不登校対策の視点でみると、あらためて気づかされることが多くあります。


そして、本校はまさしく今年度、このことを土台として取り組んでいます。


それが、「けテぶれ学習法」の葛原祥太先生が提唱されている、もう一つのツール『(しん)マトリクス』です。




『心マトリクス』は、“思いやり”を横軸に、“一生懸命”を縦軸に、さまざまな感情を、わかりやすいイラストと言葉で表しています。

これは、児童自身が今どの状態なのかを知る『心の羅針盤』であるとともに、先生たちは『ニコニコ』『キラキラ』『モクモク』だけを求めるのではなく、どの状態にあってもあなたを認め、見守っていますよ、というメッセージでもあります。

川上康則先生、葛原祥太先生に共通しているのは、『まずは子どものあるがままを受け入れて信頼関係を築くことが何よりも大切』ということでしょう。

『子どもに任せる』『子どもに委ねる』『子どもが主語』『誰一人取り残さない』などのキーワードが教育界で飛び交っていますが、いろいろな先生の言葉がつながり、やっと「あっ、こういうことなのか」と実感がもてるようになってきました。


ということで、これからの鴨方東小学校、ますます楽しくなる予定です。(原)



【追記】

ちなみに本校は、この『心マトリクス』をすべての教室に掲示しています。

そして、教員の名札(裏面)にも入れています。(教頭先生発案です。)


【補足】

ちなみに、過去の川上康則先生に関するブログはこちら。

校長雑記#56【教室の中での不適切なかかわり】(2022.10.1)

校長雑記#151【子どもに任せるポイントは…】(2024.5.2)